保育実習中、こんなことで悩んだことはありませんか?
「子どものどんなところを観察すればいいの?」
「保育者の援助や配慮って、何を見ればいいんだろう?」
「毎日同じようなことしか書けない……」
実習中は子どもと関わるだけでなく、保育者の動きや環境など、さまざまなことに目を向ける必要があります。
でも、何を意識して観察すればよいのか分からないと、日誌を書くときに困ってしまいますよね。
そんなときは、観察する視点を少し変えてみるのがおすすめです。
例えば、子どもが遊んでいる姿を見るときも、遊びの内容だけでなく、表情や言葉、友達との関わりなど、さまざまなところに目を向けることができます。
この記事では、保育実習で役立つ観察の基本的な考え方と、具体的な観察ポイントを紹介します。
日誌を書くときはもちろん、実習中に「何を見ればいいんだろう?」と迷ったときにも、ぜひ参考にしてみてください。
保育実習ではまず1日の流れを知ろう
保育実習が始まったら、まずは保育園の1日の流れを知ることから始めてみましょう。
保育園では、登園から降園まで、食事や遊び、排泄、午睡など、さまざまな活動が行われています。
年齢や園の方針によって違いはありますが、毎日の生活にはある程度決まった流れがあります。
例えば、次のような流れです。
- 登園
- 遊び・生活活動
- 食事
- 休息・午睡
- おやつ
- 遊び
- 降園
※あくまで一例です。年齢や園によって活動内容や順番は異なります。
実習初日から細かい部分まで観察しようとすると、何を見ればよいのか分からなくなってしまうかもしれません。
そんなときは、まず大きな流れをつかみ、少しずつ細かい部分に目を向けてみましょう。
例えば、最初は「食事」という大きなまとまりで捉えます。
慣れてきたら、
- 食事の前には何をしているのか
- 子どもたちはどのように食べているのか
- 保育者はどのような援助をしているのか
- 食事が終わった子どもはどうしているのか
といったように、観察する内容を細かくしていきます。
1日の流れが分かってくると、次にどのような活動があるのか予測しやすくなり、観察にも少しずつ余裕が生まれてくるでしょう。
まずは全体の流れをつかみ、そこから気になる部分を詳しく見ていくことをおすすめします。
観察するときの3つの基本項目
保育実習日誌にはさまざまな書式がありますが、一般的によく見られるものに、次のような項目があります。
- 子どもの姿
- 保育者の援助・配慮
- 環境
これらは実習日誌を書くときだけでなく、保育の現場に出てからも大切になる視点です。
まずは、この3つを意識して観察してみましょう。
子どもの姿
子どもが何をしているのか、どのような様子で過ごしているのかを観察します。
例えば、
- どのような遊びをしているか
- どのような表情をしているか
- どのような言葉を使っているか
- 友達や保育者とどのように関わっているか
- 自分で取り組んでいることは何か
- どのような場面で援助を受けているか
などです。
ここで意識したいのは、子どもが「できる・できない」だけに注目しないことです。
例えば、着替えに時間がかかっている子どもがいたとします。
「一人で着替えられない」と捉えるだけでなく、
「自分でズボンをはこうとしている」
「ズボンの前後を確認している」
「難しいところは保育者に手伝ってもらっている」
といった姿にも目を向けてみましょう。
子どもが何をしようとしているのか、どのように取り組んでいるのかを観察することで、新たな気づきにつながるかもしれません。
保育者の援助・配慮
保育者が子どもに対して、どのように関わっているのかを観察します。
例えば、
- どのような言葉をかけているか
- どのような表情や声の大きさで話しているか
- どのタイミングで援助しているか
- 子どもの気持ちをどのように受け止めているか
- 安全面にどのような配慮をしているか
- 保育者同士でどのように連携しているか
などです。
保育者の援助は、子どもに直接声をかけたり、手伝ったりすることだけではありません。
子どもの様子を見守ることや、必要に応じて環境を整えることも、大切な援助の一つです。
例えば、靴を自分ではこうとしている子どもがいたとします。
保育者はすぐに手伝うのではなく、子どもの様子を見守っているかもしれません。
そこから、
「なぜ、すぐに手伝わなかったのだろう?」
「子どものどのような姿を見て、援助するタイミングを判断したのだろう?」
と考えてみると、保育者の関わりの意図を理解するきっかけになります。
ただし、観察しただけでは保育者の意図が分からないこともあります。
そんなときは、実習先の先生に質問してみるのもよいでしょう。
環境
保育では、子どもを取り巻く環境も大切な役割を持っています。
例えば、
- 棚や玩具がどのように配置されているか
- 子どもが自分で玩具を取り出せるようになっているか
- 机や椅子がどのように配置されているか
- 落ち着いて過ごせる場所があるか
- 安全面にどのような工夫がされているか
- 保育者がどこに位置しているか
などです。
環境を観察するときは、配置や設備を見るだけでなく、その環境が子どもの生活や遊びにどのようにつながっているのかにも目を向けてみましょう。
例えば、玩具が子どもの手の届く場所に置かれている場合、自分で好きな玩具を選んで遊ぶ姿が見られるかもしれません。
また、机や椅子の配置にも、子どもが落ち着いて食事をしたり、安全に活動したりするための工夫があるかもしれません。
「なぜ、この場所に置いてあるのだろう?」
「この配置には、どのような意味があるのだろう?」
と考えてみることで、環境構成への理解も深まっていくでしょう。
なお、保育環境には玩具や設備などの物的環境だけでなく、保育者や友達などの人的環境、自然や社会の事象なども含まれます。
詳しくは、後ほど「環境の視点」で紹介します。
5W1H+1で観察を深めよう
ここまで、観察するときの3つの基本項目を紹介しました。
さらに観察を深めたいときに役立つのが、5W1H+1の考え方です。
5W1Hとは、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」という6つの視点のことです。
ここでは、さらに「How many(どれくらい)」を加えて考えてみましょう。
| 項目 | 観察するときの問い |
|---|---|
| When(いつ) | いつ起きたのか? |
| Where(どこで) | どこで起きたのか? |
| Who(誰が) | 誰が関わっていたのか? |
| What(何を) | 何をしていたのか? |
| Why(なぜ) | なぜそのような行動をしたのか? |
| How(どのように) | どのような様子だったのか? |
| How many(どれくらい) | 何回?(材料や玩具などの)量・数は? |
例えば、遊びの場面で「子どもが積み木で遊んでいた」という姿を観察したとします。
これだけでも子どもの活動は分かりますが、もう少し詳しく見てみましょう。
- When:朝の自由遊びの時間
- Where:保育室の積み木コーナー
- Who:AちゃんとBちゃん
- What:積み木を積み上げていた
- How:交互に積み木を重ね、高くなると笑い合っていた
- How many:積み木を5個ほど重ねていた
このように観察すると、単に「積み木で遊んでいた」だけでは分からなかった、子ども同士の関わりや遊び方が見えてきます。
そして、ここから「Why(なぜ)」を考えてみましょう。
「なぜ、2人で交互に積み木を重ねていたのだろう?」
「なぜ、積み木が高くなると笑い合っていたのだろう?」
こうした疑問を持つことで、子どもの気持ちや遊びの面白さについて考えるきっかけになります。
ただし、子どもの気持ちや行動の理由は、観察しただけでは分からないこともあります。
そのため、実際に見たことと、自分が考えたことを区別するようにしましょう。
また、5W1H+1のすべてを毎回確認する必要はありません。
「どのように遊んでいるのかな?」
「誰と関わっているのかな?」
など、その場面で気になったことを一つずつ意識するだけでも、観察の幅は広がります。
大切なのは、項目を埋めることではなく、子どもの姿や保育者の関わりをより丁寧に見ようとすることです。
ここからは、保育実習で観察するときのヒントとして、「生活」「遊び(教育)」「養護」「環境」「心の育ち」の5つに分けて紹介します。
これらは、観察しやすいようにこの記事で整理したものです。実際の保育では、それぞれの内容が重なり合い、つながっています。
生活の視点
保育園では、食事や排泄、睡眠、着脱、清潔など、さまざまな生活場面があります。
こうした毎日の生活の中にも、子どもの成長や発達、保育者の援助について学べることがたくさんあります。
観察するときは、子どもが何をしているのかだけでなく、どのように取り組んでいるのか、保育者がどのように関わっているのかにも目を向けてみましょう。
食事
食事の場面では、食具の使い方や食べる様子、食事中のやり取りなどを観察してみましょう。
【子どもの姿】
- 手づかみ、スプーン、フォーク、箸など、どのような方法で食べているか
- 食具をどのように持ち、使っているか
- 自分で食べているか、保育者の援助を受けているか
- 食べ物に対してどのような反応を示しているか
- 食事中、友達や保育者とどのようなやり取りをしているか
【保育者の援助・配慮】
- 食事の準備や配膳をどのように行っているか
- 子どもの食べるペースに合わせて、どのような声かけや援助をしているか
- 食べたがらない子どもにどのように関わっているか
- 食事を楽しめるように、どのような言葉かけをしているか
- 誤嚥や窒息などを防ぐために、どのような安全面の配慮をしているか
食事は、栄養を摂るだけでなく、食べる楽しさを感じたり、食具の使い方を身につけたりする機会でもあります。
子どもの食べる量や食具の使い方だけでなく、食事を楽しむ姿や、自分で食べようとする姿にも目を向けてみましょう。
排泄
排泄の場面では、子どもの発達や生活習慣に応じた援助が行われています。
排泄の自立には個人差があるため、一人ひとりの様子や保育者の関わり方を観察してみましょう。
【子どもの姿】
- おむつやトイレなど、どのような方法で排泄しているか
- どのようなタイミングでトイレに行っているか
- 尿意や便意をどのように伝えているか
- 衣服の上げ下げなど、どのようなことに自分で取り組んでいるか
- 排泄の前後にどのような行動をしているか
【保育者の援助・配慮】
- どのようなタイミングでトイレに誘っているか
- 子どもの排泄のタイミングをどのように確認しているか
- おむつ交換やトイレで、どのような援助をしているか
- 子どもの気持ちやペースに合わせて、どのように関わっているか
- プライバシーや衛生面にどのような配慮をしているか
排泄は、とても個人的な生活行為です。
自分でできることが増えていく過程だけでなく、子どもが安心して排泄できるように、保育者がどのように関わっているかにも注目してみましょう。
なお、排泄場面の観察や記録では、子どもの羞恥心やプライバシーへの配慮も忘れないようにしましょう。
睡眠(午睡)
午睡の場面では、子どもが安心して休息できるよう、さまざまな援助や配慮が行われています。
寝かしつけの方法だけでなく、眠るまでの様子や睡眠中の安全管理にも目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 午睡の準備にどのように参加しているか
- 自分で横になっているか、保育者の援助を受けているか
- 眠るまでにどのような様子が見られるか
- 安心して眠るために、どのような関わりを求めているか
- 目覚めたときにどのような様子が見られるか
【保育者の援助・配慮】
- 午睡前にどのような言葉かけや関わりをしているか
- なかなか眠れない子どもにどのように対応しているか
- 室温や明るさ、寝具などをどのように整えているか
- 睡眠中の呼吸や体勢などをどのように確認しているか
- 目覚めた子どもにどのように関わっているか
午睡は、子どもが心身を休める大切な時間です。
眠りにつくまでの過程には個人差があり、すぐに眠れる子どももいれば、時間がかかる子どももいます。
「なかなか寝ない」という結果だけでなく、その子がどのように過ごしているのか、保育者がどのように安心できる環境を整えているのかを観察してみましょう。
また、睡眠中の安全確認は、子どもの命を守るために欠かせないものです。保育者がどのような方法で安全を確認しているかも、大切な観察ポイントです。
着脱
着脱の場面では、衣服の着方や脱ぎ方だけでなく、自分でやってみようとする姿や、困ったときの行動にも目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 衣服をどのような順番で着たり脱いだりしているか
- 衣服の前後や裏表をどのように確認しているか
- ボタンやファスナーなどをどのように扱っているか
- 自分でできるところと、援助を受けているところはどこか
- うまくいかないときに、どのような行動をしているか
【保育者の援助・配慮】
- 子どもが自分で取り組めるよう、どのような言葉をかけているか
- どのタイミングで手伝っているか
- 子どもの発達や意欲に合わせて、どのように援助しているか
- 着脱しやすいように、どのような環境を整えているか
- 子どもの気持ちやプライバシーにどのような配慮をしているか
着脱は、子どもが自分でできることを少しずつ増やしていく生活場面の一つです。
例えば、ズボンをはくのに時間がかかっていても、自分で足を通そうと工夫しているかもしれません。
保育者がすぐに手伝うのではなく、見守っている場面にも意味があることがあります。
子どもが取り組む過程と、保育者が援助するタイミングの両方に注目してみましょう。
清潔
手洗いや身の回りの清潔を保つことも、保育園での大切な生活習慣の一つです。
子ども自身の行動だけでなく、保育者が衛生的な環境を保つために行っていることも観察してみましょう。
【子どもの姿】
- どのようなタイミングで手を洗っているか
- 手洗いをどのような手順で行っているか
- 石けんやタオルなどをどのように使っているか
- 鼻水や口の周りの汚れなどに、どのように対応しているか
- 身の回りを清潔にする活動に、どのように参加しているか
【保育者の援助・配慮】
- 手洗いの必要性をどのように伝えているか
- 子どもの発達に合わせて、どのように手洗いを援助しているか
- 鼻水や食べこぼしなどを、どのように拭き取っているか
- 玩具や机などの清掃・消毒をどのように行っているか
- 換気や衛生用品の管理など、感染症予防のためにどのような配慮をしているか
清潔を保つことは、子どもの健康を守るだけでなく、生活習慣を身につけることにもつながります。
例えば、手洗いの場面では、子どもが自分で洗おうとしている姿や、保育者が洗い残しにどのように対応しているかなどを観察できます。
また、保育者が日常的に行っている清掃や消毒、換気などにも目を向けてみましょう。
遊び(教育)の視点
保育園では、子どもたちはさまざまな遊びを通して、多くのことを経験し、学んでいます。
遊びを観察するときは、何をして遊んでいるのかだけでなく、子どもがどのように遊びを楽しみ、友達や保育者、身近な環境と関わっているのかにも目を向けてみましょう。
保育所保育指針では、1歳以上3歳未満児と3歳以上児の保育について、教育に関わるねらいや内容が次の5つの領域に分けられています。
- 健康
- 人間関係
- 環境
- 言葉
- 表現
これらは「5領域」と呼ばれ、保育を考えるうえで大切な視点となります。
なお、乳児保育では「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」という3つの視点から、ねらいや内容が示されています。
また、5領域はそれぞれ独立しているものではありません。
例えば、友達と追いかけっこをする遊びの中にも、体を動かす楽しさ(健康)、友達との関わり(人間関係)、言葉でのやり取り(言葉)など、さまざまな育ちが含まれています。
5領域に関わる育ちは、遊びだけでなく、日々の生活の中にも見られます。
ここでは、5領域を参考にしながら、遊びの中で観察できる子どもの姿や保育者の援助について紹介します。
健康
「健康」の領域では、子どもが心身の健康を保ち、体を動かす楽しさを感じながら、意欲的に活動する姿などに目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 走る、跳ぶ、登る、くぐるなど、どのように体を動かしているか
- 戸外遊びや運動遊びに、どのような様子で参加しているか
- 遊具や用具をどのように使って遊んでいるか
- 自分でやってみようとしたり、繰り返し挑戦したりする姿があるか
- 疲れたときや休みたいときに、どのような行動をしているか
【保育者の援助・配慮】
- 子どもが十分に体を動かせるよう、どのような遊びや環境を用意しているか
- 子どもの発達や運動能力に合わせて、どのような援助をしているか
- 挑戦しようとする子どもを、どのように見守ったり励ましたりしているか
- 遊具や用具を安全に使えるよう、どのような配慮をしているか
- 疲れや体調の変化に、どのように気づき対応しているか
例えば、すべり台で遊んでいる子どもを観察するときは、滑っている姿だけでなく、階段をどのように登っているか、順番を待っているか、繰り返し遊ぼうとしているかなどにも目を向けてみましょう。
また、保育者がどこで見守り、どのようなタイミングで援助しているのかも、大切な観察ポイントです。
人間関係
「人間関係」の領域では、子どもが友達や保育者と関わりながら、さまざまな経験をしている姿に目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 友達や保育者に、どのように関わろうとしているか
- 一人で遊んでいるか、友達と一緒に遊んでいるか
- 友達の遊びに興味を持ったとき、どのような行動をしているか
- 玩具の貸し借りや順番を待つ場面で、どのような姿が見られるか
- 自分の思いや要求を、どのように相手に伝えているか
- 友達と意見が合わないとき、どのように行動しているか
【保育者の援助・配慮】
- 子ども同士が関わるきっかけを、どのようにつくっているか
- 友達とのやり取りを、どのように見守っているか
- 子ども同士のトラブルに、どのように対応しているか
- それぞれの子どもの気持ちを、どのように受け止めているか
- 自分の思いを伝えたり、相手の思いに気づいたりできるよう、どのように援助しているか
例えば、友達と同じ玩具を使いたくなり、取り合いになった場面があったとします。
そのとき、どちらが先に使っていたかということだけでなく、子どもたちがどのような言葉や行動で気持ちを表しているかにも目を向けてみましょう。
また、保育者がすぐに仲裁するのか、子ども同士のやり取りを見守るのか、その関わり方にも注目してみましょう。
友達との関わりは、楽しく遊んでいる場面だけでなく、思いがぶつかり合う場面からも学べることがあります。
環境
「環境」の領域では、子どもが身近な自然や物、さまざまな事象に興味や関心を持ち、自分から関わろうとする姿に目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 身近な自然や生き物に、どのような興味を示しているか
- 草花や虫、砂、水などに、どのように触れて遊んでいるか
- 玩具や素材の特徴に気づき、どのように遊びに取り入れているか
- 物の形や大きさ、色、数量などに関心を示しているか
- 発見したことや不思議に思ったことを、どのように表しているか
【保育者の援助・配慮】
- 子どもが身近な自然や物に触れられるよう、どのような機会を設けているか
- 子どもの興味や発見に、どのように応じているか
- 子どもが自分で試したり考えたりできるよう、どのように関わっているか
- 遊びが広がるように、どのような素材や用具を用意しているか
- 子どもの疑問や発見を、どのように受け止めているか
例えば、園庭でダンゴムシを見つけた子どもがいたとします。
子どもがどのようにダンゴムシを観察しているか、触れようとしているか、友達や保育者に発見を伝えているかなど、さまざまな姿を見ることができます。
また、保育者が子どもの発見にどのように応じ、興味や関心を広げようとしているのかにも注目してみましょう。
なお、ここでいう「環境」は、子どもが身近な環境と関わる中での育ちを捉える領域です。
保育室の配置や玩具の置き方など、保育者が整える環境については、後ほど「環境の視点」で詳しく紹介します。
言葉
「言葉」の領域では、子どもが自分の気持ちや考えをどのように表し、相手の言葉をどのように受け止めているかに目を向けてみましょう。
【子どもの姿】
- 自分の気持ちや要求を、どのような言葉やしぐさで伝えているか
- 友達や保育者と、どのようなやり取りをしているか
- 相手の話を聞いて、どのように反応しているか
- 遊びの中で、どのような言葉を使っているか
- 絵本や紙芝居、言葉遊びなどに、どのような興味を示しているか
【保育者の援助・配慮】
- 子どもの言葉やしぐさを、どのように受け止めているか
- 子どもが話しやすいように、どのような関わりをしているか
- 子どもの発達に合わせて、どのような言葉を使っているか
- 子どもの気持ちや考えを、どのように言葉にして伝えているか
- 絵本や歌、言葉遊びなどを、どのように取り入れているか
例えば、子どもが「見て!」と保育者に声をかけた場面では、何を見せようとしているのか、どのような表情で伝えているのかなどを観察してみましょう。
また、保育者がどのように応じ、その後どのようなやり取りが続いているのかにも目を向けてみましょう。
言葉による表現がまだ十分でない子どもも、表情や指さし、身ぶりなど、さまざまな方法で思いを伝えています。
話している言葉だけでなく、言葉以外の表現にも注目してみましょう。
表現
「表現」の領域では、子どもが感じたことや考えたことを、自分なりの方法で表している姿に目を向けてみましょう。
表現には、絵を描くことや歌うことだけでなく、体を動かしたり、音や素材に触れたりすることなども含まれます。
【子どもの姿】
- 歌や音楽に合わせて、どのように声を出したり体を動かしたりしているか
- クレヨンや絵の具、粘土などの素材を、どのように使っているか
- 色や形、音、感触などに、どのような反応を示しているか
- ごっこ遊びで、どのような役になりきったり、言葉や動作で表したりしているか
- 自分のイメージを、どのような方法で表現しているか
【保育者の援助・配慮】
- 子どもが自由に表現できるよう、どのような素材や用具を用意しているか
- 子どもの表現を、どのように受け止めているか
- 子どもの発想やイメージを、どのように大切にしているか
- 歌や音楽、造形、ごっこ遊びなどを、どのように取り入れているか
- 子どもが自分なりに表現する過程を、どのように見守っているか
例えば、クレヨンで絵を描いている子どもを観察するときは、何を描いたのかという完成した作品だけでなく、色を選ぶ様子や線を描く動き、描きながら話している言葉などにも目を向けてみましょう。
また、保育者が子どもの表現をどのように受け止めているのかも大切な観察ポイントです。
「上手に描けたか」「何を描いたか」という結果だけでなく、子どもが表現することを楽しんでいる過程にも注目してみましょう。
養護の視点
保育所保育指針では、養護について「生命の保持」と「情緒の安定」の2つの側面から示されています。
養護とは、子どもの生命を守り、心身の健康や情緒の安定を図るために、保育者が行う援助や関わりのことです。
保育園では、食事や排泄、睡眠などの生活場面はもちろん、遊びや日々の関わりの中でも養護が行われています。
ここでは、保育者が子どもの健康や安全、気持ちの安定をどのように支えているのかに目を向けてみましょう。
生命の保持
「生命の保持」では、子どもの健康や安全を守り、快適に生活できるようにするための援助や配慮を観察してみましょう。
【観察するポイント】
- 子どもの顔色や表情、機嫌などから、体調の変化をどのように確認しているか
- 一人ひとりの健康状態や生活リズムに合わせて、どのように対応しているか
- 食事や水分補給、休息などを、どのようなタイミングで行っているか
- 室温や湿度、換気など、室内環境をどのように調整しているか
- 子どもが安全に過ごせるよう、どのような事故防止の対策をしているか
- 体調不良やけがが起きたとき、保育者同士でどのように連携しているか
例えば、戸外遊びから戻ってきた子どもたちに、保育者が水分補給を促している場面があったとします。
そのとき、単に「水分補給をしていた」と捉えるだけでなく、
「どのようなタイミングで水分補給を促しているのだろう?」
「子どもの体調や活動量に合わせて、どのような配慮をしているのだろう?」
と考えてみましょう。
また、保育者が子どもの小さな体調の変化に気づき、どのように対応しているのかも大切な観察ポイントです。
情緒の安定
「情緒の安定」では、子どもが安心して自分の気持ちを表し、落ち着いて生活できるようにするための関わりを観察してみましょう。
【観察するポイント】
- 子どもの気持ちや要求を、どのように受け止めているか
- 泣いたり不安を感じたりしている子どもに、どのように関わっているか
- 子どもが安心できるよう、どのような言葉かけやスキンシップをしているか
- 子どもの気持ちやペースを尊重して、どのように援助しているか
- 子どもが自分の思いを表せるよう、どのような関わりをしているか
- 一人ひとりが安心して過ごせるよう、どのような雰囲気や環境をつくっているか
例えば、登園時に保護者と離れることを嫌がり、泣いている子どもがいたとします。
そのとき、保育者がどのような言葉をかけているのか、抱っこをしたり、そばで見守ったりしているのかなどを観察してみましょう。
また、子どもが落ち着くまでの様子や、その後どのように遊び始めたのかにも目を向けてみるとよいでしょう。
情緒の安定を支える関わりは、泣いている子どもを落ち着かせることだけではありません。
子どもの喜びや楽しさに共感したり、自分でやってみたいという思いを受け止めたりすることも、大切な関わりです。
環境の視点
保育園では、子どもが安心して生活し、主体的に遊べるように、さまざまな環境が整えられています。
保育環境には、玩具や設備などの物的環境、保育者や友達などの人的環境、自然や社会の事象なども含まれます。
ここでは、観察しやすいように「物的環境」と「人的環境」の2つに分けて紹介します。
観察するときは、環境がどのように整えられているかだけでなく、その環境の中で子どもがどのように過ごしているかにも目を向けてみましょう。
物的環境
物的環境とは、保育室や園庭、玩具、家具、遊具など、子どもを取り巻く物や設備のことです。
【観察するポイント】
- 玩具や絵本が、どのような場所や高さに置かれているか
- 子どもが自分で玩具を選んだり、片づけたりできるようになっているか
- 遊びの内容に合わせて、どのようなコーナーが設けられているか
- 机や椅子、棚などが、どのように配置されているか
- 子どもが落ち着いて過ごせる場所が用意されているか
- 転倒や誤飲などを防ぐために、どのような安全面の工夫がされているか
例えば、保育室の棚に玩具が並べられている場面を観察するとします。
そのとき、玩具の種類や数だけでなく、
「子どもが自分で取り出せる高さになっているかな?」
「遊びたい玩具を自分で選べるようになっているかな?」
「遊び終わった後、自分で片づけられるようになっているかな?」
といったことにも目を向けてみましょう。
また、子どもたちが実際にどのように玩具を選び、遊び、片づけているのかを観察すると、環境構成の工夫や意図が見えてくるかもしれません。
保育者が活動に合わせて机や椅子を移動させたり、玩具の配置を変えたりする場面も、観察してみるとよいでしょう。
人的環境
人的環境とは、保育者や友達など、子どもの周りにいる人たちとの関わりを含む環境のことです。
保育者の言葉かけや援助だけでなく、保育者同士の連携や、子ども同士の関係などにも目を向けてみましょう。
【観察するポイント】
- 保育者が子どもたちと、どのような距離感で関わっているか
- 子どもが気持ちを表したとき、周囲の保育者や友達はどのように応じているか
- 子ども同士が関わりやすいよう、どのような工夫がされているか
- 保育者が遊びの中で、どのような役割を担っているか
- 保育者同士がどのように役割を分担し、連携しているか
- 子どもが困ったときや助けを求めたとき、周囲の人がどのように応じているか
例えば、自由遊びの時間に、保育者が子どもたちの遊びを見守っている場面があったとします。
そのとき、保育者がどこに位置しているのか、どの子どもたちの様子を見ているのか、必要に応じてどのように関わっているのかを観察してみましょう。
また、保育者同士が声をかけ合いながら子どもたちを見守っている場合は、どのように役割を分担しているのかにも注目してみましょう。
人的環境は、保育者と子どもの一対一の関わりだけではありません。
友達同士の関係や、保育者同士の連携なども、子どもが生活する環境に関わっています。
目に見えない「心の育ち」にも目を向けよう
ここまで、生活や遊び、養護、環境など、さまざまな観察の視点を紹介してきました。
最後に、もう一つ大切にしてほしいのが、目には見えない「心の育ち」にも目を向けることです。
子どもの成長というと、歩けるようになった、言葉が増えた、自分で着替えられるようになったなど、目に見える変化に注目しがちです。
しかし、子どもは日々の生活や遊び、人との関わりを通して、心も少しずつ育んでいます。
例えば、保育者との信頼関係や、自分でやってみようとする意欲、うまくいかなくても繰り返し挑戦する姿などです。
こうした心の育ちは、直接目で見ることはできません。
だからこそ、子どもの表情や行動、周囲の人との関わりなどを丁寧に観察し、その背景にある気持ちや育ちについて考えてみましょう。
愛着・信頼関係
子どもが安心して生活したり、さまざまなことに挑戦したりするうえで、身近な大人との愛着や信頼関係は大切な土台となります。
愛着とは、子どもが特定の養育者などとの間に築いていく、情緒的な結びつきのことです。
保育園でも、保育者が子どもの気持ちや要求を受け止め、丁寧に関わることを積み重ねながら、安心できる関係を築いていきます。
【観察するポイント】
- 不安なときや困ったとき、子どもはどのように助けを求めているか
- 保育者に自分の気持ちや要求を、どのように伝えているか
- 保育者との関わりの中で、どのような表情や行動が見られるか
- 保育者のそばを離れて遊び始めたり、必要に応じて戻ってきたりする姿があるか
- 保育者は子どもの気持ちや要求に、どのように応じているか
例えば、遊んでいる途中で不安になり、保育者のもとへ戻ってくる子どもがいたとします。
保育者に抱っこしてもらった後、再び遊び始める姿が見られるかもしれません。
こうした姿から、子どもが保育者との関わりの中で安心感を得ている可能性を考えることができます。
ただし、一つの行動だけで愛着や信頼関係が築かれているかどうかを判断することはできません。
子どもの気質や発達、体調、その日の気分などによっても行動は異なります。
さまざまな場面での姿や、保育者との日々の関わりを通して、子どもがどのように安心感を得ているのかを考えてみましょう。
非認知能力に関わる育ち
子どもの心の育ちを考えるうえで、「非認知能力」という言葉を耳にすることもあると思います。
非認知能力とは、知識や計算力などの認知的な能力とは異なる、意欲や粘り強さ、感情の調整、他者と関わる力などに関係する能力を指す言葉です。
これらは、テストの点数などで簡単に測れるものではありません。
保育所保育指針でも、「学びに向かう力、人間性等」が育みたい資質・能力の一つとして示されています。
保育園では、日々の生活や遊びの中で、こうした力に関わるさまざまな姿が見られます。
【観察するポイント】
- 興味を持った遊びに、自分から取り組もうとしているか
- うまくいかないとき、どのように行動しているか
- 繰り返し試したり、工夫したりする姿があるか
- 自分の気持ちを、どのような方法で表しているか
- 友達と協力したり、相手の思いに気づいたりする姿があるか
- 保育者は子どもの意欲や気持ちを、どのように受け止めているか
例えば、積み木を高く積もうとして、何度も崩れてしまう子どもがいたとします。
それでも繰り返し積もうとしたり、積み方を変えてみたりする姿が見られるかもしれません。
こうした姿から、子どもの意欲や粘り強さ、工夫しようとする姿勢などについて考えることができます。
一方で、積み木が崩れて遊ぶのをやめたり、保育者に助けを求めたりすることもあるでしょう。
それも、そのときの子どもの気持ちや状況を知るための大切な姿です。
「最後まで頑張れたからよい」「途中でやめたから粘り強さがない」と判断するのではなく、子どもが何を感じ、どのように行動していたのかに目を向けてみましょう。
非認知能力に関わる育ちも、一つの行動だけで評価できるものではありません。
子どもの姿を丁寧に観察し、さまざまな経験を通してどのような育ちが考えられるのか、少しずつ理解を深めていきましょう。
まとめ
今回は、保育実習日誌を書くときに役立つ観察の視点について紹介しました。
観察するときは、まず保育園の1日の流れを知り、「子どもの姿」「保育者の援助・配慮」「環境」の3つの基本項目に目を向けてみましょう。
そこから、生活・遊び・養護・環境・心の育ちなど、さまざまな視点を取り入れていくことで、気づきが広がっていくと思います。
ただし、今回紹介した観察ポイントを、すべて一度に見ようとする必要はありません。
まずは、自分が気になったことや、もっと知りたいと思ったことから観察してみてください。
そして、
「なぜ、このような行動をしたのだろう?」
「保育者は、どのような思いで関わっているのだろう?」
と疑問を持つことも大切です。
観察した事実をもとに考えたり、分からないことを実習先の先生に質問したりすることで、保育への理解も少しずつ深まっていくでしょう。
「何を書こう?」と悩んだときは、まず「何を見よう?」と考えてみてください。
今回紹介した視点が、実習中の観察や日誌を書くときのヒントになればうれしいです。
保育実習日誌の具体的な書き方や例文については、こちらの記事も参考にしてみてください。

